社内イベント制作ストーリー【第2章_企画の壁!目的とテーマ決めに大苦戦!】

イベント担当に任命されてから最初の1週間は、とにかく情報をかき集めることから始まりました。
昨年のイベント資料、過去の写真、参加者アンケートの結果——机の上にはどんどん紙の山が積み上がっていきます。

でも、何を見ても最初に立ちはだかる壁は同じでした。
「今回の目的は何か?」
これが決まらないと、すべてが動き出せないのです。


部長から言われたのは「社員同士の交流を深めたい」という、ふわっとした方針だけ。それを具体的な形にするのが私の仕事です。でも、交流と一口に言っても、表彰式をやるのか、ゲーム大会にするのか、はたまたパネルディスカッションなのかで、準備も雰囲気もまるで違います。

「交流」と「盛り上がり」は必ずしも同じじゃない。例えば、お酒を飲みながらの懇親会は盛り上がるけど、深い話はしづらい。逆にワークショップ形式なら部署を超えた意見交換ができるけど、参加者が退屈に感じることもある…。
頭の中で選択肢を並べては消し、また浮かべては消す、そんな日々が続きました。


ある日の午後、会議室で総務チームの先輩・佐藤さんに相談してみました。


「目的がぼんやりしてて、何から決めたらいいかわからないんです」


佐藤さんはペンをくるくる回しながら、こんなことを言いました。
「まずは、参加者にどうなってほしいかを考えるといいよ。“楽しんでほしい”とか“仲良くなってほしい”じゃなくて、もう一歩踏み込んで。“イベントが終わった後に、参加者がどんな気持ちで会社に戻るか”をイメージするんだ。」

その言葉は、私の中で何かを動かしました。
例えば「普段話さない部署の人と自然に会話できた」と感じてもらうこと。それは確かに“交流を深める”の具体的な姿です。


週末、ノートとペンを持って近所のカフェにこもり、自分なりに参加者像を描いてみました。
参加者は20代から50代まで幅広く、性格も立場もバラバラ。中にはイベントが苦手な人もいるはずです。そんな人たちが無理なく会話できるきっかけを作るには、どうすればいいのか…。

頭に浮かんだのは、昨年の写真の中で、一番楽しそうに笑っている人たちの姿。ゲームの最中、知らない人同士が肩を並べて笑っていました。その瞬間こそ、今回のイベントで再現したい場面かもしれない。

「笑顔でつながる時間」——その言葉がノートの真ん中に浮かび上がりました。


翌週の定例会議で、私はそのテーマ案を発表しました。
「今年の社内イベントのテーマは、“笑顔でつながる時間”です。部署や年齢に関係なく、自然に笑顔になれる瞬間を作ります。」

発表を終えた瞬間、部屋が静まり返りました。部長は腕を組んだまま、じっと私を見ています。
数秒後、「いいね」と短く言いました。その一言で、肩から力が抜けました。

ただし、その後に続いたのは厳しい現実です。
「で、そのテーマをどう実現する? 具体的なプログラムは?」

まだ何も固まっていない私は、慌てて「これから練ります」と答えるしかありませんでした。テーマは決まった。でも、それはまだスタートラインに立っただけ。この先にあるのは、山のような準備と判断。そう思うと、少し背筋が伸びると同時に、胸の奥がざわざわしました。


帰り道、駅までの歩道を歩きながら空を見上げました。夕焼けのオレンジ色が、どこか優しく背中を押してくれるようです。
「笑顔でつながる時間」。自分で決めたからには、この言葉に恥じないイベントを作らなくては。そう静かに誓いました。


【第2章まとめ】企画や目的設定のポイント

  • イベントのゴールを明確にする
    「何のために開催するのか」を最初に決める。例:社員同士の交流促進、周年記念のブランディ ング強化、部門間の情報共有など。
  • 主催側と参加者の両方の視点を持つ
    企画者の意図だけでなく、参加者が「参加して良かった」と感じる価値を盛り込む。
  • 目的を数値化・具体化する
    「参加率80%以上」「参加者アンケート満足度4.5以上」など、測定可能な目標に落とし込むことで企画の評価が可能になる。
  • 社内の現状と課題を踏まえる
    今抱えている組織課題(部門間の壁、コミュニケーション不足、モチベーション低下など)を洗い出し、それを解決する内容にする。
  • 予算とリソースを考慮した現実的な企画
    ゴールが高くても、予算や人員に合わない企画は実現できない。制約条件を踏まえて工夫する。
  • ストーリー性を持たせる
    単なる進行表ではなく、オープニングからエンディングまで参加者の感情が動く流れを設計する。
  • 関係者の合意形成を早めに行う
    上層部や関連部署と早期に目的と方向性を共有し、途中での大きな軌道修正を防ぐ。

【第3章_会場探しと見積もり地獄に大混乱】