2025.08.13
社内イベント制作ストーリー【第7章_イベント本番当日 – トラブルと神対応!】
テーマが決まり、「さあ次は会場探しだ!」と意気込んだ私だったが、その勢いはすぐに現実の壁にぶつかった。
——会場探し、それは想像以上に過酷な道のりだった。
最初の一歩は、会社のデスクでPCを開き「都内 社内イベント 会場」と検索することから始まった。
画面には広々としたバンケットルームや、おしゃれなレンタルスペースの写真がずらりと並ぶ。どこも洗練されていて、「ここなら映えそう!」と胸が躍る。
しかし、詳細ページを開いた瞬間、その気持ちは一気に冷める。
使用料だけでなく、機材費、飲食費、サービス料、さらには控室利用料まで加算され……計算してみると、見積もりはあっという間に予算の限界を超えてしまうのだ。
「このステージ、理想的…でも機材使用料だけで予算の半分が飛ぶ。」
「こっちは安いけど、天井が低くて圧迫感が…。」
条件とコストのにらめっこを繰り返すうちに、気づけば1週間が過ぎていた。
平日だけでは進まないと感じた私は、週末も現地下見に回った。
土曜の朝、スーツ姿で向かったのは都内の高級ホテルの宴会場。担当スタッフがにこやかに案内してくれ、天井から下がるシャンデリアや重厚なカーペットの質感に思わずため息が漏れる。
「素敵…」と思ったのも束の間、提示された金額を見て「これは無理だ」と心の中で肩を落とす。
日曜には貸し会議室を見に行った。値段はリーズナブルだが、会議用の長机とパイプ椅子が整然と並ぶ殺風景な空間に、「これじゃパーティー感が出ないな…」とため息が出た。
その時、私ははっきり悟った。
会場選びは単なる場所探しではない。
アクセスの良さ、雰囲気、設備、そして予算——そのすべてが揃う場所を見つけるのは、宝探しに近い作業だ。
そんな行き詰まりを感じていた金曜の午後、部長から声がかかった。
「会場探し、どうだ?」
「正直、難航してます…」と答えると、部長は少し考えてこう言った。
「外部のイベント会社に相談してみたらどうだ?」
思わず聞き返す。
「え、そんなことできるんですか?予算オーバーしませんか?」
「案外そうでもないぞ。プロはネットに載っていない情報も持ってるし、条件交渉もしてくれる。むしろコストを抑えられるかもしれない。」
その言葉が、私の中で小さな火を灯した。
デスクに戻るとすぐに検索窓に「社内イベント 会場提案」と打ち込む。
いくつかのサイトを開いては閉じる中で、ふと目に留まったのがGROWSという会社だった。
サイトには、企業の周年イベントや表彰式、懇親会などの事例が写真付きで紹介されている。どの写真も笑顔にあふれ、照明や装飾が洗練されていて、「こんな雰囲気を作れたら…」と胸が高鳴る。
さらに「会場手配から演出、当日運営まで一貫サポート」という一文が目に入った。
正直、半信半疑だった。それでも「お問い合わせ無料」の文字に背中を押され、私はフォームに状況を書き込み送信ボタンを押した。
送信直後、「本当に送っちゃった…」と心臓が少し早くなる。
驚いたのはその日の夕方。
見知らぬ番号から電話が鳴り、出てみると明るく落ち着いた声が耳に届いた。
「GROWSの島田と申します。お問い合わせありがとうございます。◯◯様のイベント概要とご予算を踏まえて、いくつか候補をご提案できますよ。」
短いやり取りだったが、その声には不思議な安心感があった。
「この人なら、私の無茶な条件もちゃんと聞いてくれるかも」——そう感じさせる響きだった。
翌週、私はGROWSのオフィスを訪ねた。
扉を開けると、温かな照明と観葉植物が迎えてくれる落ち着いた空間。
島田さんは席を立って「ようこそ」と笑顔で迎えてくれた。
「会場探しは本当に大変ですよね。私たちは日々いろんな会場を下見していますし、直接やり取りしているので条件交渉も可能です。」
そう言って差し出された分厚いファイルには、これまで自分で探していた候補とは全く違う会場がずらりと並んでいた。
写真には、柔らかな間接照明が印象的な会場や、天井が高く開放感のあるスペース、ガーデン付きで自然光が差し込むバンケットなどが並び、それぞれに「この会場はケータリングが好評」「ここは駅から徒歩3分でアクセス抜群」などのメモが添えられている。
それはネットで必死に調べた情報とはまるで違う、“現場を知っている人の言葉”だった。
「…こんなにスムーズに出てくるんですか?」と驚く私に、島田さんは笑った。
「イベント会社は、“探す”のではなく“知っている”ところから始められるんです。」
その日、私は3つの会場候補を持ち帰った。どれも予算内、そして雰囲気もテーマにぴったり。
帰り道、肩の荷がすっと軽くなった気がした。
もちろん、この先も決めることは山ほどある。それでも、「一緒に走ってくれるプロがいる」という安心感は、私の心を強く支えてくれた。
この時の出会いが、後に私の奮闘を大きく変えることになる——そんな予感が、冬の冷たい空気の中で静かに芽生えていた。