2025.08.13
社内イベント制作ストーリー【第7章_イベント本番当日 – トラブルと神対応!】
まだ外は薄暗い朝6時。アラームより早く目が覚めた。
緊張のせいか、眠ったのかどうかも曖昧だ。シャワーを浴び、スーツに袖を通す。鏡に映る自分は、少し顔がこわばっていた。
8時前、会場入り。
バンケットルームの扉を開けると、すでにGROWSのスタッフが会場内を動き回っていた。照明テスト、スクリーンの映像確認、マイクの音量調整。各リハーサルが始まっていた。
「おはようございます!」と声をかけると、島田さんが笑顔で振り返る。
「おはようございます。今日は楽しみましょうね。」
その言葉だけで、少し心が軽くなった。
8時半、受付チームが集合。
名札や参加者リストを机に並べ、リハーサル通りに手順を確認する。
「じゃあ、9時開場です。皆さん、よろしくお願いします!」
声を張ると、スタッフたちが力強く頷いた。
開場時間になると、一気に人の波が押し寄せる。
「おはようございます!」「こちらが名札になります」
笑顔を絶やさないようにしていたが、内心は必死だった。受付列が滞らないよう、列の誘導に走り回る。
10時、オープニング映像が流れ、場内が暗転。
映像に合わせてBGMが高まり、スクリーンに映し出されたのは、過去のイベントの笑顔や社内風景の数々。会場から小さなどよめきが起こる。
続く部長の挨拶も滑らかで、ここまでは順調——のはずだった。
最初のゲーム開始直前、事件は起きた。
司会者用のワイヤレスマイクから突然「ジジジ…」というノイズ音。
スタッフが慌ててチャンネルを変えるが、音は消えない。
私の頭の中は真っ白になった。
「どうしよう、このままだとゲームが始められない…」
その時だった。島田さんがすっと近づき、予備マイクを司会者に手渡した。
「このマイクでお願いします、チャンネルはA-2に切り替え済みです。」
司会者がそのままゲーム開始のカウントダウンに入ると、会場の雰囲気は何事もなかったかのように盛り上がり始めた。
ほんの数十秒の出来事だったが、私には永遠のように感じられた。
ゲームは想定以上の盛り上がりを見せた。
部署対抗戦では、普段クールな管理部長が真剣な表情で輪投げをする姿に歓声が上がり、営業チームが一致団結して声援を送る。
「やっぱり、この瞬間が作りたかったんだ…」と胸が熱くなる。
昼の歓談タイムでは、フォトブースが大人気。
「はい、もう一枚!」と笑い声が飛び交い、スタッフのカメラロールはあっという間にいっぱいになった。
社内SNSにも写真が次々アップされ、「#笑顔でつながる時間」のタグがトレンド入り。
午後のクライマックスは、全員参加のクイズ大会。
GROWSが用意してくれた大型スクリーンのスコア表示が会場を一体にし、正解が出るたびに拍手と歓声が沸き起こる。
「もっと続けたい!」という声も上がったが、進行を守るために泣く泣く終了。
そして迎えたエンディング。
スライドショーには、今日一日の笑顔が次々と映し出される。
誰かが「わぁ…」と小さく声を上げ、それが会場全体の拍手へと変わった。
私はステージ袖でその音を聞きながら、こみ上げてくるものを必死でこらえていた。
閉会後、片付けの最中に部長が近づいてきた。
「よくやったな。来年も任せるよ。」
その一言に、肩の力が抜けた。
島田さんも笑顔で言った。
「よかったですね?」
私は「はい」と答えながら、心の中で——この人たちと一緒に作れて、本当に良かった——と呟いた。