2025.08.13
社内イベント制作ストーリー【第7章_イベント本番当日 – トラブルと神対応!】
会場がほぼ決まり、次はいよいよプログラム作りに着手する段階になった。
「笑顔でつながる時間」というテーマは決まったものの、それをどう具体化するか——ここが一番の腕の見せ所だ。
最初の週末、私はノートとカラーペンを持ってカフェにこもった。
ラテの湯気を眺めながら、思いつく限りのアイデアを書き出す。
オープニングは映像で一気に空気を温めたい。部署対抗のゲームで自然な交流を生む。歓談タイムにはちょっとしたクイズやフォトスポットを用意して、最後は当日の写真を使ったスライドショーで余韻を残す…。
書き出しているうちは楽しい。けれど、ペンを置いた瞬間、不安が押し寄せる。
「このゲーム、本当に全員が楽しめる?」「持ち時間、足りるかな?」「司会は誰に頼む?」
頭の中で疑問符が次々に増えていく。プログラムはただ並べればいいわけじゃない。流れ、テンポ、参加者の集中力の波——それらを計算しながら構成する必要がある。
悩みを抱えたまま翌週を迎えた私は、前回会場探しでお世話になったGROWSの島田さんに思い切って電話をかけた。
「部署ごとの対抗戦をやろうと思うんですが、盛り上げるコツってありますか?」
電話口で少し間が空き、柔らかな声が返ってくる。
「大事なのは“見て楽しい”と“やって楽しい”の両方を成立させることです。出場しない人も置いてきぼりにならないように、応援や参加できる仕掛けを組み込みましょう。」
その瞬間、頭の中で何かがカチリと音を立てた気がした。
そうか、私は“競技に出る人”だけを参加者だと思い込んでいた。でも会場には、見ている人も大勢いる。全員が主役になれる工夫——それが欠けていた。
数日後、私はGROWSのオフィスを訪ね、島田さんと向かい合ってホワイトボードに向かった。
「ゲーム中は大型スクリーンにスコアをリアルタイム表示。歓談タイムにはフォトコンテストを仕掛けましょう。撮った写真を社内SNSに投稿してもらって、抽選で景品が当たる仕組みです。」
「いいですね、会場全体が一体感に包まれそう。」
アイデアは会話のキャッチボールのようにテンポよく形になっていく。社内だけで考えていたら何日もかかっていたことが、プロと組むとあっという間に方向性が固まる。
「こういうのって、やっぱりスピード感が違いますね。」と私が言うと、島田さんは少し笑って「経験値の差ですね」と肩をすくめた。
次の課題はスタッフ確保だ。
総務だけでは到底回らない。受付、誘導、ゲーム進行、フォトブースの運営…考えるだけで人手が必要だとわかる。
全社メールで「スタッフ募集!」と送ったが、返ってきたのはわずか2件。正直、心が折れそうになった。
そんなとき、ランチに誘ってくれた同期の美咲が、フォークをくるくる回しながら言った。
「だったら、“楽しい役割”に名前を変えてお願いしてみたら?例えば“受付担当”じゃなくて、“おしゃれフォトブースの案内役”とか、“ゲームの司会サポート”とか。名前だけでも楽しそうな方が人は集まるよ。」
そのアイデアに「なるほど!」と膝を打ち、翌日さっそく試してみた。すると驚くことに、その日のうちに5人から「やります!」と返事が来たのだ。
スタッフが集まり始めると、空気が変わった。
会議室で集まってゲームのリハーサルをしたり、フォトブースの飾り付け案を出し合ったり——笑い声が飛び交い、アイデアが次々に生まれる。
最初は「私のイベント」だったものが、少しずつ「みんなのイベント」になっていく。
GROWSからは当日の運営マニュアルのひな形と、分刻みのタイムスケジュールのサンプルが送られてきた。
「オープニング挨拶 5分」「音響キュー:BGMフェードアウト」「ゲームスタートコール:司会より」——その細かさに圧倒されつつも、「ここまで準備すれば安心だ」という気持ちが湧いてくる。
夜、自宅で最終版のプログラム表を見つめながら、ふと気づいた。
このイベントはもう、私一人のものじゃない。
同期、美咲、スタッフとして手を挙げてくれた人たち、そしてGROWSのサポート。多くの人の手によって形作られている。
「これなら、きっと“笑顔でつながる時間”になる。」
そう確信した瞬間、胸の奥が熱くなった。
そして私は気づく。
本当の勝負は当日ではなく、この「準備の過程」そのものなのだと。
準備でどれだけチームが一つになれるか。それが、当日の笑顔の数を決める——そんな確信を抱きながら、私は次の広報戦略の準備へと歩を進めた。